Brexitーイギリスはもっと老獪な国だったはずなのに

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ランニングブログでランニングネタ以外を投入ですが、子供の頃に建学500年近い寄宿学校にいたこともあるし、大学院卒業後にイギリスに舞い戻ってから10年、友人には子爵殿も侯爵殿もいる立ち位置のユニークなガイジンならではの見方というのをまとめてみたいと思いました。

この投稿のお尻に面白い政治コメディの動画とセリフの訳をつけていますが、その前に背景とイギリスという国についていくつか。

まず最初に、イギリスってどういう国ですか?という点については、日本の人が思うところと実際かなり近いです。

100年くらい前までは超大国の一つだったけれど、その後は子分だったはずのアメリカに煽られまくって、しどろもどろになりながら体裁を維持することに四苦八苦。

それでもアメリカ大陸と欧州大陸の間に位置する地理的・歴史的な関係から、外交努力によって独特の影響力を両方に(そしてそれは世界に)行使することが可能でした。

また英語の国ということで移民には魅力的だったのでアメリカにはないパッケージを提供することによって人材を惹きつけることにも成功。

そうすることで、この国は超大国の地位から陥落した後も特異稀な競争力を維持し続けることができたのです。その辺りのハンドリングは極めてうまい。それは例えば僕のケースを見ても明らか。

アメリカの東海岸やスイスの寄宿学校に留学するには経済的にハードルが高いけれど、奨学金や制度の「工夫」を通じて、両親が地方公務員といったド平民の僕のような子供でも勉強さえできれば(僕は勉強が好きでした)、中学生から留学することができたのはイギリスだけ。

リーマンショック後に、アメリカで外国人留学生の就労ビザが取得しにくくなった際には、「〇〇大学の修士号を持っていれば仕事がなくても5年間は居住して良い」というビザを発行。一銭も使わずに海外からどっと「たくさん税金を払ってくれそうな人材」をかき集めてうまいことやったのもイギリス。僕もその恩恵にあずかった一人。

それにEUとの関係だって、EUのメンバー国でありながら、通貨同盟には参加せず、誰もやりたくないような仕事をやってくれる移民を受け入れる程度で済まし、影響力を維持しつつ自由度の高い立ち位置を極めてうまく維持してこれたのもEU域内・周辺国ではイギリスだけ。

この国は結構すごかったのです。実に老獪。それも今となっては全て過去形なんですけどね。

それが、ここ数年、ポピュリズム、移民排斥の大きなうねりの中でその老獪さが失われて、Brexitという愚かな帰結に。

貧富の差がその根源にあるのかなとも思いましたが、必ずしもそれだけではない印象。オックスフォードを優秀な成績で卒業した名家の20代の若者に説教しないといけないことが最近ありました。

「移民といっても○○サンみたいにイギリスに適応する人ばかりじゃないんだ」から始まって、ポピュリストが言いそうな考えられるほぼ全ての不見識を並べ立てて同意を求めるのでカッチーン。

この男の子は頭も良いし、僕にメンターになってくれと言うほど比較的良識のある子なので余計にげんなり。「おまえさ、俺が○○寄宿学校に行ってなかったり、△△大学院の修士号を持って今の仕事してなかったら俺のことはどう思うの?」という問いかけに沈黙。

「難民に英語を教えるボランティアがあるからこい。我々は恵まれているんだ。特権階級なんだと思うなら義務を果たせ。」って言ったら、ごめんなさいとは言わなかったけど、バカな子じゃないから言ってはいけないことを言ったと反省した模様。

社会の上澄みにいる人たちにもこんなのがいるんですよ。ほんとやんなっちゃうとはこれのこと。老獪さ、賢さはどこに行ったのですかね。

この投稿の〆で、古き良き時代、英国が賢かった時代を偲ぶということで、昔の政治コメディドラマYes Minister(大臣閣下!)の中から、外交方針についての大臣レクのシーンを貼っています。

動画の下に字幕と訳をつけていますので、本来のイギリスらしさをまずはご堪能いただき、その上で、日本はこれからどうしたらいいのかなというのを考えてみるのも面白いかなと思います。

大臣:Foreign office is pro-Europe, isn’t it?
外務省は親欧州ではないのか?

官僚:Yes and No. Foreign Office is pro-Europe because it is really anti-Europe. The Civil Service is united in its desire to make sure that the Common Market didn’t work.Thats why we went into it.
YesでありNoでもあります。外務省は心底、反欧州であるからこそ、親欧州なのです。EU単一市場を失敗させるという目的のために官僚機構は一丸となっています。そのためにEUに加盟したのです。

大臣:What are you talking about?
君は何を言っているんだ・・・?

官僚:Minister, Britain has had the same foreign policy objective for at least the last 500 years. To create the disunited Europe.
大臣閣下、英国は最低でも過去500年間一貫した外交方針を持っております。それは「欧州をバラバラにしておく」というものであります。

官僚(つづき):In that cause, we have fought with the Dutch against Spanish, with the Germans against French(中略)Divide and rule, you see?
そのために英国はオランダと共にスペインと戦いましたし、ドイツと共にフランスと戦いました。いがみ合わせて支配する、わかりますかな。

官僚(つづき):Why should we change now when it has worked so well!
これまでとてもうまくいったのに変える必要があるとは思えません

大臣:Ancient history, surely
昔の、歴史の話、、、だね・・・

官僚:Yes, and current policy!
ええ、そして今の政策でもあります

官僚(つづき):We had to break whole thing up so we had to get inside. We tried to break it out from outside but it wouldn’t work.
ぶっ壊すためには内に入らなければなりません。外から壊そうとしましたが、うまくいきませんでしたからね。

官僚(つづき):Now that we are inside, we can make a complete pig’s breakfast of the whole thing. Set the Germans against the French, the French against the Italians, the Italians against the Dutch.
しかし、今は我々もいわば身内、内からめちゃくちゃにしてやることが出来ます。たとえばドイツをフランスにけしかけ、フランスをイタリアに、イタリアをオランダに。

官僚(つづき):Foreign office is terribly pleased! It’s just like the old times!
ですので外務省は現状にきわめて満足しております。古き良き時代ですよ。

大臣:Surely, we are all committed to the European ideal. If not, why are we pressing for an increase in the membership?
でも、欧州の理想に我々みなコミットしているではないか。でなければなぜEU加盟国を増やすように要求などするものか。

官僚:Well, it’s just like the United Nations in fact. The more members it has the more arguments it can stir up.The more futile and impotent it becomes.
それは国連の場合と同じであります。加盟国が増えれば増えた分だけ収拾がつかなくなり、ますます無能で役に立たないものになるはずであります。

大臣:Appalling cynicism…
なんという皮肉主義だ・・・

官僚:Yes, we call it diplomacy, minister.
はい、大臣閣下。それをわれわれは外交と呼んでおります。

・・・だったはずなのに、今のイギリスは自分ひとり飛び出して、欧州は団結するという皮肉。まったくどうなっているんですかね。